wee-jay

瞑想(迷走)中です。

Steve Roden/...I listen to the wind that obliterates my traces

-ギターをもった一人の若者が、『ダウン・ホーム・ブルース』をうたい、じょうずに自分で伴奏した。彼の二番目の歌には、三人のハーモニカと、一人のバイオリンとが合奏した。- 
(J・スタインベック『怒りの葡萄』下巻 新潮文庫 P191)

『怒りの葡萄』の舞台は1930年代のアメリカ中西部、この描写はトム・ジョードの一家がダストボウルで農作物が育たなくなったオクラホマから脱出し、希望の元にカリフォルニアへ移動してきて、あるキャンプの夜の一場面です。ミュージシャンだけではなく当時の労働者はギターやバンジョー、そしてバイオリンを持ちブルースやカントリーソングをどこともなく気ままに歌っていたのでしょう。そんな情景が目に浮かぶ『怒りの葡萄』の中でも僕が好きなシーンです。

と言いつつもこの小説読んだのは何年も前なのでこのシーンのことはすっかり忘れてました。しかし今回紹介するこの180Pの写真集&2CDに収められてる一枚の写真、テントの前でサスペンダーとシャツ姿の若者がバイオリンを弾いている写真で僕はこのシーンを思い出し、そのイメージがこの写真と結びつきました。



このブログでは過去に二度"Stars of ice""The Opening Of The Field "で取り上げているサウンド・アーティストのSteve Rodenですが、なんとこの作品はRoden本人の1920年代から1930年代にかけてのブルースやカントリー、フォークソング、バラードなそアメリカのポピュラー音楽の膨大なSP盤コレクションの中から選りすぐりのものを集めた2CD。加えてこれも彼のコレクションである1880年から1955年の古いミュージシャンたちの写真集めた写真集がその全貌。で、その内容は本当に5000円出してもちっとも惜しくない素晴らしいものとなっている。

Steve Rodenのような実験音楽家がこのような作品を発表するのは意外と思われるかもしれないけど、前述のStars of iceというアンビエントアルバムは、古い中国のクリスマスキャロルの入ったSP盤を主題としていたので、彼のSP盤コレクターとしての片鱗は実は作品に表れていたんですね。

"Ernest Thompson ""Marc Williams"みたいな検索しても出てこない名も無きミュージシャンからJohn Jacob NilesやSeger Ellisといった当時の売れっ子まで網羅する全51曲。大概は現在では名前すら知られていない人たちの録音が多くを占めます。無名といっても演奏と歌は有名どころと比べても遜色ない素晴らしいもので、レコード針が拾うノイズの向こうでギター、ピアノ、バンジョー、バイオリンといった楽器たちが素直でシンプルな美しいメロディーを奏で、これまた率直な歌が聴く者に何かを伝えようとしてくる。ストレートな歌詞、シンプルな歌唱、昔の音楽はこんなに装飾のないものだったと再認識させてくれます。
そしてこれは常日頃から考えることだけど、当時の社会で有名無名の差なんて、運とかそのときいた場所に大きく左右されたんじゃないかな、ってことです。こういう音源を聴くとわかりますが、有名ミュージシャンも無名ミュージシャンも演奏技術なんてそう大差ないと僕は思っています。ブラインド・レモン・ジェファーソンもロバート・ジョンソンも勿論素晴らしい。しかしロバート・ジョンソンは演奏も素晴らしいけど、例の十字路伝説がやはり一人歩きして有名になっている節もありますし、これも僕の敬愛するブルースマンであるブラインド・ボーイ・フラーも演奏が素晴らしい。特にラグタイムやらせたら最高だと思う。で、彼はダラムのタバコ倉庫の前で歌ってるところをレコードビジネスをしていたJ.B.ロングに出会いレコード録音のキャリアをスタートさせたと言われています。
勿論無名といっても録音が残っているのでプロでしょう。本当によいパトロンと出会えるか、それは運の要素も大きかったのではと思います。いずれにしてもこうして日の目を見ることのなかった名もなき音楽が日本にいながらして聴けるのは素晴らしいことではないでしょうか。
更に触れておくべきこととして、1930年代に録音されたサウンドエフェクトが収録されています。おそらく研究者か当時のちょっと道を外れたような音楽家のいずれかが残したものだと思いますが、風や雨や雷の音・氷や雪の上を歩く足音・鳥や夜の虫の鳴き声といったフィールド・レコーディングです。こういう音が残ってるのも凄いですけどロデンはこんなものまでも集めているんですねと本当に感服してしまう。そういえば鳥の鳴き声なんか電子音に聞こえたり…そんなことないか。

写真についてもちょっと
この本の表紙の写真、真ん中の人透けてますね。怖いです。どういう技術を使って撮られているか写真に詳しくないのでよく分かりませんが、惹かれるのは僕だけでしょうか。とにかく戦前のミュージシャンのポートレイトからもっとプライベートで楽器を構えた写真まで、更にグラスハープやってる写真やピアノ、バイオリンやトランペットを同時演奏できるシステムの写真といったマニアックなものまでよくこんなの集めたなあと言えるものすごい写真集です。僕はお店屋さんじゃないので、アマゾンのリンクなどで写真の一部が見れるので良かったらどうぞ。ちなみに僕はピアノ、バンジョー、ギターの傍らで足を組んで座る男の写真が好きです。だって、その写真、"Papa and his only true friends"って書いてあるんだもん。

そんなわけで最高なので戦前音楽やカントリー・ブルース好きから前衛音楽好き、はたまた写真やファッションが好きな人までおススメできます。良かったらどうぞー。

リリース元のdust-to digitalからこんなトレイラーが

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  1. 2013/06/25(火) 21:41:08|
  2. music
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Stephen Cornford and More.../Cartridge Music(Composed by John Cage)

AKBの総選挙があった裏でこんな人気投票やってるんすねえ。

「魔法陣グルグル2」7.22発売記念イベント 第1弾「魔法陣グルグル」キャラ投票開催!!

グルグルは子供の頃からずっと好きなのでもちろん投票しました。主なキャラクターが一覧になるとやっぱカオスですね。

あと、ゆっくり読み続けていた『放浪息子』ようやくコミックスに追いつきました。小学五年生で始まったのにもう高校生ですか…最新巻は14巻ですが、個人的には12巻96話の扉絵にぐっと来まして(笑)。96話は中学校の卒業式なんですね。放浪息子は中学編結構長くて、入学から長いスパンでやったことと、いろんな出来事を丁寧に積み重ねての卒業が96話の扉絵に現れてると思いまして。上8割くらいが真っ白で何も線がなく、下の方でただ各々好きなポーズきめた登場人物が並んでるだけという思い切った構図(満を持しての卒業ですよ)が、卒業を暗示するものは描かれていなくても、「ああ、卒業式なんだ」ということが何故か分かってしまって(勿論それまでの展開で推測できるのだけど)、ちょっとこみ上げそうになってしまいました。これと佐々ちゃんが髪を下ろしたのにはびびった。

結局漫画の話ばっかですか?すみません。以下が本題です。

6271ea961e.jpg

購入はArt Into Lifeさんなどで

現代音楽のみならず全てのの作曲家に多大な影響を与え続けている…というような説明さえ不要な作曲家John Cageの1960年の作品『Cartridge Music』を紹介します。ピアノの弦に物を挟みこんで打楽器的な音色に変化させるプリペアドピアノを発明したり、4分33秒の間演奏者は沈黙を守り、その間観客の出す音などに焦点を当てる『4分33秒』などで有名なケージですが、この『Cartridge Music』はレコードプレイヤーのカートリッジという部分(まあ、レコード針ですね)を使いそれにモノを取り付けて(あるいはカートリッジでモノを擦り付けて)、それをマイクでアンプリファイ(電気増幅)して場合によっては変調させるというコンセプト楽曲ですね。この作品は作曲作品なので楽譜があるわけですが、それをグーグルin da houseして見てみると…

Cage_Catridge1.gif
こんなのとか…

CAGE_cartridge_music_1974.jpg
こんなのとか。(拡大できます)

いわゆる図形楽譜というものですね。似たようなパーツのものは共通してありますが何故違ったものになってるのかというと、そもそもこの楽譜は20ページの図形楽譜と4枚の透かし絵が用意されていて、演奏者が任意で図形楽譜一枚を選んで、その上に透かし絵を乗せて僕にはわかりませんがちゃんとした読み方のもとに演奏するというもの。なので結果として完成した楽譜には基本的に同じものは存在せず、演奏する側としてはかなり自由度が高い楽曲と言っていいかもしれません。

さて、この音源を実際に演奏するパフォーマーはこの七人
Stephen Conford
Alfredo Costa Monteiro
Robert Curgenven
Ferran Fages
Patrick Farmer
Daniel Jones
Lee Peterson
となっていて、注目するのはやはりStephen Cornfordというサウンドアーティストでしょう。

この動画でも分かるとおり彼は一部屋ほどのスペースの壁にぶら下げたたくさんのテープレコーダーをコードで繋いで、カセットプレイヤーの再生機能ではなく、レコーダー本体が出すかすかな物音やグリッチ、ノイズに注目。それをマイクでアンプリファイしそれらが共鳴しサウンドを構築するインスタレーションで有名(?)な人で、最近よく作品をリリースしている。後述しますがこの人の音楽性とこのカートリッジ・ミュージックは非常に相性がいい。他の演奏者たちもこのAnother Timbreレーベルの人脈らしく、同じような物音音楽を志向する人達なんだと思う。

そして演奏を聴いてみると意外と無音の部分が多く、スキマのある内容。カートリッジに装着してるものはフォークや落ち葉、石や金属製のカップ、タワシ、ベッドのスプリング、その他よく分からない金属の物質などで、おもむろに「サー カチャッ ゴトゴト」とか「ジーーーー ギギギギギギ」「ピー ゴソゴソ ガチャンゴォォォ」「ビシャン ブゥゥゥン」とかいう物音や突発的に現れる鋭利なハーシュノイズ。モノを取り付けたカートリッジを擦ったり叩きつけたりしてこれらの音を出しているのですが、これらのモノから出力されているとは思えない驚きがある。基本的に音はソロで現れるのだけど、時折各奏者の音が重なり合って芸術的なレイヤーを構成する場面もありかなり聴かせる37分。

動画:このCDが録音された2012年というのはジョン・ケージ生誕100周年ということで、世界各地でこのカートリッジ・ミュージックもたくさん演奏されたようで、このCDもその流れによるものと思われます。動画も割りと上がってて興味があればぜひ見てみてください。(貼ってるこの動画は2008年ですが)

どこぞのカレッジで行われたカートリッジ・ミュージックの演奏。演奏内容は楽譜の組み合わせによるからやはりこのCDとは違った内容。何をやってるか見やすくて良い。
  1. 2013/06/16(日) 20:03:24|
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