wee-jay

瞑想(迷走)中です。

Eddie Prevost - Alan Wilkinson - Joe Williamson/Along Came Joe


Along Came Joe
Eddie Prevost-Drums
Alan Wilkinson-Alto & Baritone Saxophones
Joe Williamson-Double Bass

フリージャズの世界で大御所のAMMのドラマーEddie Prevostとサックス奏者Alan Wilkinson、さらにダブルベース奏者のJoe Williamsonのチームイギリスなサックストリオで参加したロンドンの2006年のフェスティバルでの録音がこのCDであり、その内容は35分1曲、事前の決め事一切なしの完全なるフリーインプロヴィゼーションである。

一番聴くべきなのはやはりアラン・ウィルキンソンのフリーなサックスである。アルトサックスで驚くほど甲高いトーンを長いこと出したり、バリトンサックスを吹いたときの音の太さ。即興で紡がれるフレーズはユニークで一聴して彼のサックスだとわかる。僕は彼のビキビキビキと切り裂いていく音が大好き。

また彼はサックストリオとしては上記のメンバー以外にも、Steve NobleというドラマーとJohn Edwardsというベース弾きとレギュラーでバンドを組んでおり、録音も『Obliquity』、『Live at Cafe Oto』がCDで出ている。特に後者のロンドンのカフェ・オトでのライブ盤は猛烈すぎるマグマの噴火のような演奏が聴ける(伊達さんという方のレビューがとても素晴らしいので是非ご覧ください )。サックスのテンションも尋常じゃないんだけどプレイスタイルは基本的にいつもと一緒である。一方のリズム体は、Steve Nobleのドラムは手数が多くて何より一打が非常に重い。John Edwardsのベースもとにかく音が大きく、弓弾きはギスギスとして不快に響いてる。つまりこのトリオはヘビー級な三位一体ハードコアフリージャズといった感じ。力学が前に前にぐいぐいと引っ張っていくような演奏である。

では、今回書こうとしているEddie PrevostとJoe Williamsonのリズム体はどうなのか。それを考えるのがこの記事の骨子である。

結論から言えば、このCDはライトなノリで聴きやすいフリージャズで、リズム体が入れ替わっただけ印象ががらっと変わる。まあ当然のことなのかもしれないが、このように音源を比較することで各々の演奏スタイルが明確になって面白いし、聴き比べられるのでもっと楽器の音について詳しくなれるのかもしれない。
このCDはAMMの作品をいっぱいリリースしてるMatchless Recordingsから出ていることもあってバンドリーダーはEddie Prevostであることは間違いなく、それ故にシンバルを弓で弾いたりしてドローンを作ったりするような演奏なのかと思いきや、普通にスティックを握り手数が多く、それ以上にスネアを叩く音の切れ味がとても痛快な小気味よいドラムを聴かせてくれる。実際冒頭の9分くらいはウィルキンソンとプレヴォーのデュオインプロなんだけど、巧みに演奏に強弱を付けるプレヴォーに、素晴らしい反射神経で掛け合うウィルキンソンは素晴らしい。
ドラムスとサックスはこんな感じに進んでいくのだが、むしろ特異なのはベースのJoe Williamsonである。さっきライトなノリと書いたけど、あくまでフリージャズという音楽の中での意味で使ったので、当然耳をつんざくような高音やギィィィという不協和音は当然沢山入っている。ところが9分過ぎJoe Williamsonが入ってくるところから様相は変わってくる。ドラムとサックスの熱さなんてどこ吹く風と言った体で、中くらいの音域で起伏が少ない丸いアタックのベースを淡々と弾くことに徹している。演奏のテンションがほぼ一定で、アルコ弾きのソロでも病んだ響きはなくむしろ牧歌的ですらある。
ドラムとサックスが前に出て、ベースが後方でマイペースに低音を刻んでいくという変わった位置感が面白い。先に挙げたSteve NobleとJohn Edwardsのリズム体は三位一体のグルーヴと書いたけど、リズム体が入れ替わることでもっとも特徴の違いが表れてるのはこういうとこなのかなと思う。

こういった感じでバンドの花形となる楽器は同じ人が演って、リズム体が別の人に入れ替わるとこんなにもサウンドが変わるという好例であるように思います。もちろん演奏も凄い良いので是非。

動画
このトリオでの演奏がなかったので各々の演奏でも
Eddie Prevost。 with Evan Parker/John Edwards

Alan Wilkinson。with Steve Noble/Pat Thomas/John Coxon

Joe Williamson。with Steve Beresford/Roger Turner

これで大体カバーしました!
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  1. 2013/02/23(土) 22:40:47|
  2. music
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ジョージ・オーウェル/動物農場

                   
              動物農場 (角川文庫)/ジョージ・オーウェル

『人間たちにいいようにされている農場の動物たちが反乱を起こした。老豚をリーダーにした動物たちは、人間を追放し、「すべての動物が平等な」理想社会を建設する。しかし、指導者となった豚たちは権力をほしいままにし、動物たちは前よりもひどい生活に苦しむことになる・・・。ロシア革命を風刺し、社会主義的ファシズムを痛撃する20世紀のイソップ物語。』


本について何かを書くとき、本の内容のネタバレをしないようにしないようにと苦心しています。とはいっても以前エッセイを二冊取り上げたのですが、そのときはそんなプレッシャーは感じなかったし、漫画を扱ったときでも前もってネタバレありますと予告しておいたので変なプレッシャーは感じなく書いてました。ところが今回のように小説となると、その部分は非常にデリケートになってしまわざるを得ない気がします。漫画と同じように但し書きで注意しておいたらいいのですが、小説に関しては個人的にそういうことをしたくないという気持ちがあります。前段落の文章は角川版『動物農場』の裏表紙に書いてある紹介文の引用です。「誰でも本を買うときにはここを見るだろ」というまことに勝手な推測で、これを引用することを本の内容説明(つまりネタバレ)にかえてしまおうという魂胆です。
さて、その引用を読んだだけで今このブログを読んでくれてる人も少しこの小説に対して興味が沸いてくると思うのですがどうでしょうか。上の引用だけでも小説の説明には的を得ています。そう、今日書いていくのはイギリスの小説家ジョージ・オーウェルの1945年発表の寓話小説『動物農場』です。今からいろいろ書いていこうというのだが、基本的には上の引用を少し掘り下げたものになっていくと思うのでご了承ください。

この小説は寓話という形式で動物を出して非現実的なおとぎ話を描く。しかしその本意は現実のロシア革命からスターリンの独裁政治を風刺したものである。したがって興味がある人は巻末の解説などでいろいろ調べてほしいが、登場動物とロシア革命からスターリン政治の登場人物というのは見事に呼応する。(また、登場動物の名前もその性格を端的に現している者もいる。)完全とはいえないがヒトラーのナチズムにも当てはめることはできるし、北朝鮮にも類するところもある。独裁・支配・全体主義・管理社会・・・でも、これは何も国家に限ったことではないんですよね。たとえば日本においても陸軍統制派から連合赤軍、オウム真理教まで組織内外のタテの締め付けというのは歴史的に存在します。もっと身近に、たとえば職場や学校、あるいは運動チームの先輩後輩や顧問との関係。小学生の友達グループに至るまで大なり小なり支配関係というのは存在します。そして日本では人は基本的に誰でも程度の差こそあれ組織に属しています。ということはそこにはルールと制約があり、情報の非対称性があり、少なからず「個」というものが殺されているといえます。ジョージ・オーウェルが意図したのはこういう全体主義・管理社会に対する批判と警鐘ですが、これが良いとか悪いとかの問題は別にして、こういう状況において『動物農場』はおそらく誰の心にも引っかかるところがあると思うんです。これを読んでそこでファシストの豚共を目の当たりにして何を思い出すのか、それは人それぞれ。職場を思い出すのか、学校を思い出すのか、子供の頃の思い出が蘇るのか本当に人それぞれ。でも、誰でもそういう類の何かがきっと蘇ってくるそんな小説です。ちなみに、僕が何を思い出したのかは内緒(笑)ともかく、現代の日本においてはこういう読み方が正しいと思う。そしてオーウェルの意図を汲むなら、読み取ったものは警告なのだと思えばオーウェルも喜ぶと思います。

しかしながら、僕の言いたいのはそれだけではない。単純な言葉で言うと、とっても話がミステリアスで面白いんですね。ストーリーがすごく読ませるというのもあるけど、動物が農場を経営するという非現実さがおとぎ話としてこっけいであり面白くもあるんです。「動物」が「経営」するというのはおとぎ話の世界だからですが、細部はとってもビビッドにイメージが浮かんでくる。それこそ人間並みの言動を動物がしているということがおかしくて堪らない。特に宣伝係の豚の貧しい動物たちを嘘とこじつけでで塗り固めて言いくるめる演説が幾度もあるけどその内容と身振りは本当に面白い。勿論独裁者の豚が貧しい動物を抑圧する話だからシビアな場面もある。しかしこういうことを言うと誤解があるかもしれないが、すべて含めて動物がしていることだからある種の微笑ましさみたいな何とも言えない気持ちがある。悲壮感みたいなものはそんなに感じないと言うべきか。いずれにしても、ロシア革命やスターリン批判といった背後のテーゼみたいな難しい話を抜きにして、ミステリーとして逸品の小説です。巻末の解説にあるように『ガリヴァー旅行記』みたいな読み方ができると思う。ガリヴァー旅行記はイギリスの社会や文化風刺という側面があるのは有名ですが、ガリヴァー旅行記の一遍を元ネタにしたもので日本ではスタジオジブリの『天空の城ラピュタ』がありますね。日本では老若男女に人気で、勿論背後に隠されたメッセージを読み取る見方もできますが、一般的には少年少女の冒険譚、勧善懲悪の「物語」として受け取ることができる。『動物農場』そういう見方ができるのは勿論で、肩の力を抜いてゆるりと読んでいただきたい小説です。非常に読みやすいので是非どうぞ。
  1. 2013/02/09(土) 23:10:55|
  2. book
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Ulrich Schnauss/A Long Way To Fall

Ulrich Schnauss/A Long Way To Fall

去年から楽しみにしてたシンセサイザーの魔術師Ulrich Schnaussの新譜が出ました。もちろん輸入盤が出たその日に速攻で買いました。一般的には2ndアルバムである『Strangely Isolated Place』が最も評価が高いように思いますが、僕としては去年出て記事も書いたEngineerのギタリストMark Petersとのコラボ作が名盤過ぎたUlrichですが、今作『A Long Way To Fall』も期待を裏切らない良作となっている。この人の作品は一回聴いただけで大体の人をハートを掴むのですが、繰り返して聴いても飽きるどころかずぶずぶと嵌っていってしてまうので、この作品もそうなっていくのかなあと思っているところです。

今までの彼の作品ではJudith Beckというボーカルが参加し、サウンドの大きな要素として重要な役割を果たしていましたが、今作は完全なインストアルバムとなっており、これは大きな変更点であると思う。なお、前作からの流れというか、彼のソロ作品でフォーカスされたシューゲイズサウンドは随分影を潜めた印象があります。といっても一聴してそれとわかる彼の楽曲独特のドリームポップな浮遊感、楽曲構成と進行というのは変わらない。シンセサイザーの魅力を存分に伝えたいという彼のインタビュー記事もありますが、まさにその通りで、シンセサイザーという楽器の多様なサウンドが披露されてて実に聴き応えのあるアルバムとなってます。

アルバム中最も印象に残ったのは#2.Broken Homesと#10.A Ritual In Time And Deathで、前者は玉を転がすようなクリックなキックと神聖な響きのウワモノ、その間に潜むチャイム。今までにない感じの楽曲で耳を引く。このCDにはうらぶれた家屋の写真のブックレットがついていて、いかにも退廃的な雰囲気が漂っているが、それはこの楽曲に宿ってる気がします。後者は未来的な打ち込みの上に被さるコズミックなシンセが前作の名曲Gift horse's mouthに通じる一曲。

また、前作はなかなかメロウでアンビエントな作風でしたが、今作はアップテンポの踊れる楽曲もそれなりに入ってる。#5.I Take Comfort In Your Ignoranceではディストーションギターに聴こえるサウンドが脳を活性化させてくれるし、#7.The Weight of Darkening Skiesは前に進む重厚なグルーヴが中々強烈なキラーでこれは上がる。

このように彼の今までの作風とは変えてきた今作であるが、前述したようにドリームポップな浮遊感というものは変わらない。#3、タイトル曲の#4、#6といった楽曲はそのエッセンスが詰まった心地よいシンセポップとなっている。彼の作る音楽というのはひたすらに美しい。本人の言うには、『憂鬱さやそこから逃げ出したいと思う気持ちが美しい非現実的な楽曲を作らせる。』のだそうで、現実ではないどこかに意識を運んでくれるような音楽で本当に聴き入ってしまう、期待通りの新作といえるのではないでしょうか。

動画:公式で上がっているタイトル曲'A Long Way To Fall'のPVです。

同じく'A Ritual In Time And Death'のPV

  1. 2013/02/08(金) 21:55:14|
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